東京地方裁判所 昭和51年(特わ)1988号 判決 1976年5月28日
一 本店所在地
東京都小平市花小金井南町二丁目一、一九五番地
株式会社山口工務店
(右代表者代表取締役山口章二)
本籍並びに住宅
東京都小平市花小金井南町二丁目一、一九五番地
会社役員
山口章太郎
昭和八年三月三一日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官清水勇男、弁護人中村直治(主任)、富樫光三郎出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告法人(株)山口工務店を罰金八〇〇万円に、被告人山口章太郎を懲役六月に各処する。
被告人山口章太郎に対しこの裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告法人株式会社山口工務店は、東京都小平市花小金井南町二丁目一、一九五番地に本店を置き土木建築請負および旅館業等を営業目的とする資本金四、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人山口章太郎は、被告法人の業務に関し、法人税を免れようと企て、旅館収入の一部を除外し又は架空外注費を計上して仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ
第一 昭和四六年九月一日から同四七年八月三一日までの事業年度における被告法人の実際所得金額が五、〇三八八万、二四七円あつたのにかかわらず、同四七年一〇月三一日、東京都立川市高松町二丁目二六番一二号所在の所轄立川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、六五九万一、二六九円でこれに対する法人税額が四九〇万七、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正行為により右被告法人の右事業年度の正規の法人税額一、七二八万一、七〇〇円と右申告税額との差額一、二三七万四、三〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(一)の(一)および同(三)のとおり)
第二 昭和四八年九月一日から同四九年八月三一日までの事業年度における被告法人の実際所得金額が五、六三八万四、二五一円あつたのにかかわらず、同四九年一〇月三一日、東京都東村山市本町一丁目二〇番二二号所在の所轄東村山税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五七〇万一、〇〇九円でこれに対する法人税額が一二〇万六、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右被告法人の右事業年度の正規の法人税額二、三八七万八、一〇〇円と右申告税務額との差二、二六七万一、九〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(二)の(一)および同(三)のとおり)
たものである。
(証拠の標目)
判示全般の事実につき
一、登記官作成の登記簿謄本
一、被告人山口章太郎の検察官に対する供述調書
一、被告人山口章太郎の収税官吏に対する昭和四九年一二月四日付、昭和五〇年四月一〇日付、同月二二日付各質問てん末書
一、山口初江の検察官に対する供述調書
一、島田艮一の収税官吏に対する質問てん末書
一、押収してある確定申告書三袋(当庁昭和五一年押第五三九号の一ないし三)
一、東村山税務署長作成の証明書
各勘定科目につき
一、大蔵事務官作成の架空外注費調査書(合計表)(別紙(一)の(二)の番号<3>、別紙(二)の(二)の番号<3>各外注費、別紙(一)の(二)の番号<24>期末未成工事支出金につき)
一、大蔵事務官作成の更正額調査書
(別紙(一)の(二)の番号<3>外注費、同<10>労務管理費、同<13>福利厚生費、同<20>雑費、別紙(一)の(一)の番号<17>減価償却費、同<23>受取利息、同<24>雑収入、同<28>営業権償却、<34>損金計上地方税、<37>交際費限度超過額につき)
一、松岡緑作成の上申書(当社の簿外経費について)(別紙(一)の(一)の番号<20>雑費、番号<22>消耗品費、別紙(二)の(一)の番号<25>雑費につき)
一、大蔵事務官作成の旅館収入調査書および松岡緑作成の上申書(当社の旅館収入除外額について)(別紙(一)の(一)番号<4>旅館収入高、別紙(二)の(一)の番号<3>旅館収入高につき)
一、大蔵事務官作成の簿外仕入金額調査書および松岡緑作成の上申書(当社の簿外仕入金額について)(別紙(一)の(一)および同(二)の(一)の各番号<5>当期仕入高につき)
一、松岡緑作成の上申書(当社の簿外給与の支払について)(別紙(一)の(一)および同(二)の(一)の各番号<7>給料につき)
一、大蔵事務官作成の受取利息調査書
(別紙(一)の(一)番号<23>受取利息、同(二)の(一)の番号<31>受取利息につき)
一、大蔵事務官作成の事業税調査書(別紙(一)の(一)番号<39>事業税認定損につき)
一、松岡緑作成の上申書(機械等経費の架空計上について)(別紙(二)の(二)番号<6>機械等経費につき)
一、松岡緑の収税官吏に対する質問てん末書(別紙(二)の(一)の番号<4>期首在庫高につき)
一、大蔵事務官作成の貸付金調査書(別紙(二)の(一)の番号<7>給料、同<31>受取利息につき)
一、東京都小平都税事務所長作成の税の納付状況照会に対する回答(別紙(二)の(一)番号<18>諸税公課につき)
一、新栄土地開発(株)名義の上申書および島村金雄の収税官吏に対する質問てん末書(別紙(二)の(一)の番号<36>固定資産売却益につき)
一、埼玉県川越県税事務所長作成の法人事業税、法人県民税の納付状況について(回答)と題する書面
(別紙(二)の(一)の番号<40>損益算入地方税につき)
一、松岡緑作成の上申書(当社の土地重課について)(別紙(三)の課税土地譲渡利益金につき)
(法令の適用)
一、該当罰条と刑種の選択
被告法人(株)山口工務店(以下単に被告会社という)の判示第一、第二の各所為 各法人税法一六四条一項、一五九条
被告人の判示第一、第二の各所為 各法人税法一五九条(いずれも懲役刑選択)
一、併合罪加重 刑法四五条前段
被告会社 刑法四八条二項
被告人 刑法四七条本文、一〇条
(犯情の重い判示第二の罪の刑に加重)
一、執行猶予 被告人につき刑法二五条一項
(情状について)
被告人は被告会社の業務、特に変動の激しい土木建築部門の安定をはかるため旅館部門への投資を増やしたいと考え、そのため旅館部門において現金売上の約半分を常に簿外とし、建築部門において架空外注費を計上するなどの方法により本件脱税を行なつたものである。そのほ脱額は両年度で合計三、五〇〇万円余にのぼり、小平市周辺において官公庁関係の受注の多い被告会社の信用を失遂しかねない危険な行為であると評価できるが、他方その手段は必ずしも悪質巧妙とは言えず、本件摘発後修正申告によりほ脱税額を延滞税、加算税とともに完納し、計理体制についても会計事務所の厳重な監督に服すると誓つており、旅館部門の現金収入は銀行集金方法によることとしてその明朗化をはかり再犯のおそれもないこと、その他ほ脱額を特に個人的に費消した形跡もみられないこと等被告人、被告会社に有利な諸般の情状を考慮して主文のとおり量刑する。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 安原浩)
別紙(一)の(一) 修正損益計算書
株式会社 山口工務店
自 昭和46年9月1日
至 昭和47年8月31日
<省略>
別紙(一)の(二) 工事原価報告
株式会社 山口工務店
至 昭和46年9月1日
自 昭和47年8月31日
<省略>
別紙(二)の(一) 修正損益計算書
株式会社 山口工務店
自 昭和48年9月1日
至 昭和49年8月31日
<省略>
別紙(二)の(二) 工事原価報告
株式会社 山口工務店
自 昭和48年9月1日
至 昭和49年8月31日
<省略>
当期から期首・期末未成工事支出金を加減算する方法を改め、期首未成工事支出金については、期首において各勘定科目の原価に振替算入し、期末未成工事支出金については期末において各勘定科目の原価から減算する純額方式を採用している。
別紙(三)
税額計算書
株式会社 山口工務店
<省略>
<省略>